おら、東京さ来ただ♪
夜行バスで新宿バスタまで。
早朝に着いて、そのまま秋葉原へ行った。朝はまだ人もまばらで、静かな秋葉原の駅前で一日の行動計画を確認した。
AKB48のカフェだそうな。まだ時間が早いため開いてなかった。
その二軒となりにcafeのお店を見つけて、中に入った。朝6時半から開いているのはありがたい。カフェオレを注文して席に荷物を置き、店内にひとつしかないお手洗いに並ぶ。
隣の席には品の良い佇まいのご高齢のご婦人が、優雅に珈琲たいむを楽しんでいらした。
お手洗いが空くのをずっと待つ。
待つ。
なかなか出てこない。それでも、待つ。
10分は待っていたろうか。しびれを切らしたのは隣席のご婦人。いきなり立ち上がってお手洗いのドアをノックした。中にいた人が、ノックを返してきた。
いたずらっ子のような笑みを浮かべて、私の顔を見上げてきた。
「長いわよね~」
ほどなく男性が足早に出てきた。私は席に戻ったご婦人に軽く会釈をして、お手洗いに入った。
席に戻ったら、カフェオレは冷めていた。飲み干すと、ご婦人にお礼を言って立ち上がる。
「またお会いしましょうね」
素敵な笑顔で見送られ、何度も頭を下げて、店を出た。
とてもいい言葉。
東京のど真ん中、たまたま入ったお店で、ゆきずりに言葉を交わしただけなのに、
またお会いしましょうね
なんだか、また会えるような気がして、余韻の残る別れであった。
もう二度と会うことがないことをお互いに分かっていて、
またね
と、別れる。東京の人は粋だね~
おら、東京に来て、人の心のあたたかさに触れただ。
昔、東京砂漠、なんて歌が流行ったことがあったが、オアシスみたいな人もいるんだ。
ささいなことだけど、ほっこりと心なごんだ出来ごとだった。